「魔家四将⑩ -魔家四将・封神台へ-」
『封神演義』第64回
長かった魔家四将との戦いが遂に終了。
楊戩「この戦いで僕たち崑崙の道士は初めて力を合わせて戦いました。これは大変な進歩です。だからこそ、この戦いに幕を引くのはあなた(太公望)がふさわしいのです」。
楊戩は後に「心を開く必要もない。僕は一人で何でも出来る。僕は全てを持っている……」と語っているが、その言葉の通りに序盤の彼は自分一人で全てをやろうとしていた。
たとえば四聖との戦いでは一人だけ西岐上空に待機して四聖が乗り込んできた時の最終防衛ラインになっていた。本人は「本物の太公望が西岐から外出していたのでそれを探していた」と言っているが、太公望は元始天尊の指示を受けて黄飛虎を迎えに行き、その後も崑崙は天化と哪吒を太公望の所に派遣している。つまり、崑崙は太公望の現在位置を把握しているとなり、当然、楊戩も本物の太公望の居場所は知っていたとなる。なのに楊戩が「太公望の所ではなく西岐上空にいた」と言う事は「四聖が太公望達を突破した時の最終防衛ラインを自分一人で担う為」だったと考えられる。事実、楊戩は四聖最強の王魔に一人で圧勝している。
しかし、そんな楊戩でも続く聞仲との戦いでは手も足も出ず、太公望が風の壁で守らなければ命を落とすところであった。おそらくだが楊戩が誰かに助けられる守られると言うのは師匠に続いて太公望が二人目だと考えられる。聞仲に敗れた後、楊戩は強くなる為に崑崙の教主である元始天尊に稽古を頼むが逆に「楊戩一人が強くならなくても、太公望と協力して巨大な敵を倒す事が大事」と諭される。
その話を経ての魔家四将戦では楊戩は天化達と協力して魔家四将と戦っている。「哮天犬の一撃で花狐貂を倒せる」「黒琵琶が通用しない」「魔家四将原形ヴァージョンとの戦いでさりげに青雲剣の攻撃を防いでいる」事から楊戩一人で魔家四将に勝てた可能性はある。しかし、その場合は天化達と協力して戦った場合より勝利の可能性は低くなっていただろうし勝てたとしても楊戩が激しく消耗したと考えられる。楊戩は仲間達を「信じて用いる」事で確実に勝利を得たのだった。
後の話になるが仙界大戦の中盤では楊戩は王天君によって激しく消耗して一人では戦えなくなり、哪吒や韋護がいなければ生き残る事すら危険な状態となった。この王天君との戦いで楊戩は遂に仲間達を「信じて頼る」事となった。
さて、楊戩は後に太公望の事を「あの人は人の心の中に入ってくる。誰をも信用させる何かがある。そして僕には無いものを沢山持っている」と語っている。ここで太公望が持っているものは「仲間」なのだが、それは太公望が皆を「信じて頼っている」から逆に多くの人達が太公望の周りに集まってきている。では、太公望と違って楊戩は皆を「信じて頼っていない」から「仲間」がいないのかと言ったらそうではない。楊戩自身は気付いていないのかもしれないが、楊戩も皆を「信じる」ようになっていき多くの人が集まってきている。実際、魔家四将との戦いでは楊戩は太公望に対して絶大な「信頼」を寄せているし、天化達の力も「信じて」いた。今回の魔家四将との戦いで楊戩は太公望を始めとした仲間達を「信じて」動くようになった。これは大変な進歩であった。
敗れた魔家四将だが自分の命と引き替えに豊邑の大地を腐らせようとする。
「妖怪は執念深い」。この事に太公望達は何度か苦い思いをする事になる。
姫発と再会する雷震子。
今回のシリーズでは雷震子を通して姫発と姫昌の繋がりがより明確に描写された。
雷震子が自分が仙人界に行ってから何年経っているのか気付いていなかったのは太乙真人や清虚道徳真君の時にもあった「仙人は時間的感覚が薄い」なのかなと思う。(まぁ、そう言う姫発も雷震子のイメージが数年前から変わっていないのでどっちもどっちなのだが……)
周公旦「太公望、何もあなた一人が全てを背負い込む事はありませんよ」。
さりげに太公望に向かってこういう事を言えるキャラって貴重だ。強いて挙げれば普賢真人くらいかな? あの周公旦が太公望の重荷を軽くしようと発言できたのが驚き。ここは姫昌や姫発や太公望の影響を受けて周公旦も変わってきていると言う事なのかな?
「それでもわしはいやなのだ!!」と言う太公望に対して「こんなに味方がいるんだ。みんなで戦えばいいじゃねぇか」と分かりやすい言葉で言い直す辺りに黄飛虎と言う人物の良さが出ている。
そして最後に太公望が重荷を軽くしようと決意するのが四不象の存在がきっかけと言うのが良い。
趙公明登場!
これまでもあまり古代中国ぽくないキャラやデザインや設定はあったが趙公明の存在はこれまでとは一線を画すインパクトがあった。
「SPY大作戦!!!」に続く。