「老いたる象徴と風の分岐㊦」
『封神演義』第148回
聞仲封神。
聞仲の魂魄が封神台に行かずに紂王や朱氏の墓へと行ったのは、封神台のシステムより聞仲の意思が強かったからなのかな?(ここで言うのもどうなのかなと思うが趙公明の封神がゴージャスだったのも彼の色々な意味で強い意思が封神台のシステムに影響を及ぼしたのかも?)
殷王墓を通りがかった聞仲の魂に朱氏の魂が話しかける。
どうやら本作の世界観では死んだ人間の魂は墓に宿るようだ。ひょっとしたら「あの世」的なものが無く、死んだ人間の魂は死んだ場所や墓と言った地上に留まるのかもしれない。(仙道は「再生」があるらしいので普通の人間のように魂が地上に縛られる事は無いのかもしれない)
崑崙山と金鰲島が遂に落下。
楊戩によると崑崙山の生き残りは全員脱出に成功したらしいが、金鰲島の妖怪達は脱出の術が無かったとの事。しかし、ビーナス達が楊戩に代わって金鰲島の妖怪達の救出に成功していた。
金鰲島の内部はぐちゃぐちゃになっていたので楊戩が金鰲島の妖怪を助け出すのは難しかったのだろうが、個人的にはもう少し楊戩に頑張ってほしかったところ。最終的に新しい仙人界の教主となるのなら、妖怪が楊戩を信頼する何かしらのエピソードが欲しかった。
巨大ロボットまで操縦出来る雲霄三姉妹。
究極黄河陣もだったが、この三姉妹は敵の時は「ちょっと強い」程度だったのが味方になってからは「何でもありのチートキャラ」となっている。バトル作品では『ドラゴンボール』のピッコロやベジータのように「敵の時はとんでもなく強かったが味方になったらちょっと強い程度に弱体化する」と言うのがパターンなのだがこの三姉妹にはその法則は当てはまらなかった。
全てが終わり、涙する太公望。
個人的にこの作品で最も印象に残った場面。
太公望の泣く場面で太公望と周りの人の関係が見える。
太公望は自分の弱さを武吉には悟らせないようにしたし、おそらく武吉も太公望が泣くと言うのは想像もしていないだろう。
楊戩に対しても太公望は自分の泣くところは見せなかった。ただし、楊戩は太公望の言葉一つで事情は察したし、太公望も楊戩が事情を察する事は分かっていたと思う。
そして太公望が自分の弱さを直接見せられるのは四不象だけであった。
「こうして仙界大戦は終結した。それぞれの胸に深い爪痕を残して……」。
「太上老君をめぐる冒険1 -帰還そして旅立ち-」に続く。