遂に紂王が長い霞のかかった甘い夢から覚める時が来る。
牧野の戦いでの紂王は子供と言う若さの象徴の姿で現れ、戦いの中で大きく強大になっていったが、天化の指摘を受けて現実を知った瞬間、その殻は壊れ、牧野にたった一人で縮こまる事となる。そして朝歌で自分が成した事を目の当たりにし、力無く禁城に戻った紂王は実年齢と同じ老人の姿となっていた。
夢は終わったのだ……。
今思えば王天君のシルエット(アイコン?)ってグレイ型の宇宙人だったんだな。
これまで妲己と言う絶世の美女とゴージャス三昧を過ごしていた紂王だったが、今回の話でそのゴージャス生活の裏で民がどのような生活を送っていたのかを知る。ここで妲己とは真逆の女性キャラとして朝歌に住む母娘が出てくる。
朝歌に住む母親に包丁を刺されるが紂王の肉体には傷は付かなかった。だが、この時の「お前は王なんかじゃない!!」と言う言葉と共に振り下ろされた包丁は「王としての紂王」をある意味で殺したと言える。
これは「ひょっとしたらそうなのかなぁ……」レベルで語るが、禁城に戻った紂王は「何だキサマは!!」と城の衛兵に暴行を受けるが、ここで一人だけ紂王に気付く衛兵がいた。後に天化を刺し殺す「代々殷王家に仕えていた男」はこの衛兵だったのかな。この時の紂王の様子がいつもと違う事を気にして、紂王の命令通りに城の中の物を民に分け与えた後、心配になって紂王の所に戻ったら天化との戦いを目撃してしまったとか。
牧野の戦いの後始末をテキパキと済ませる武王を見て「キャラがえらくかわったのう…。つい最近までアホ丸出しだったのに…」と驚く太公望。本格登場した頃の「プリンちゃん」のインパクトが強いので武王はバカな若様な印象があるが、実は武王は趙公明攻略が終わった辺りからはシリアスな場面の方が多かったりする。
『封神演義』のトラウマ回と言えばハンバーグ回が有名だが、この回はまだコミカルな味付けをしたり直接的に見せないようにするなど色々と配慮がしてあった。しかし、連載3年を越えて読者層も定まったこの頃になると、どこまで踏み込んで描写しても大丈夫かと言う基準が作者と編集者の中で出来たのか、今回の話は崩壊した国を直接的に描いている。個人的にはハンバーグ回に匹敵するトラウマ回だった。
「黄家の血① -天化のゼルプスト-」に続く。