「鏡1」
『封神演義』第186回
まさかの太公望封神!
しかし、燃燈道人は「太公望を信じろ」「太公望はこの程度で死ぬような男か?」と皆に問いかけ、それを聞いた楊戩は「まず死にませんね」と答える。
楊戩は張公明戦で太公望が封神されたと思った時は「このくそじじい!」と元始天尊を締め上げるほどに怒りを見せていたが、後の女媧戦で太公望が消滅するかもとなった時は意外と冷静であった。この時の燃燈道人の言葉があって、楊戩は女媧が道連れを仕掛けても太公望はそう簡単には死なない、いつかひょっこりと帰ってくると信じるようになったのかもしれない。
さすがの妲己も太公望と王天君と王奕の関係については知らなかった。『封神演義』の難しいところは全てを知っているように見える妲己ですら知らない事実が終盤まであったと言う事だろう。第1回の時点で全てを知っていたのは元始天尊、燃燈道人、伏羲、太上老君の4人くらいであろうか。この中で最初から登場しているのは元始天尊のみで、しかも彼は事実を終盤まで明かさなかったので、読者が全てを知るのもかなり終盤に入ってからとなった。
燃燈道人が消化試合を行う事になり、妲己はチームの残り3人の妖怪を登場させる。残り3人の名前は袁洪、朱子真、常昊で、既に倒されたのは高覚、馬善、鳥文化の3人なので、「7人」と言っていながら実は「6人」しかいない。王貴人と胡喜媚はゲストチャレンジャーだったので、ひょっとしたら7人目は妲己本人だったのかもしれない。
今回は太公望と王天君が実は同一人物だったと判明する衝撃の回。
コミックスの表紙で太公望と王天君だけが逆さに描かれているのが伏線の一つとして語られる事が多い。少年ジャンプのシステムを考えたら、さすがに第1巻の時点でそこまで後の構成が決まっていたとは思えない(当初の予定では2年弱くらいで終わる予定だったらしい)が、王天君が登場した辺りで両者を対にする事は決まっていたかもしれない。
見返してみて興味深いのは太公望の王天君評が「大そうな危険人物」「妲己を思い出させるほどの策士」「楊戩にこだわる」「人間の心を読み、それを利用する」「チームに属しているようで属していない」となっているところ。実はこれは全て「太公望にも当てはまる」のだ。そして王天君の行動も「楊戩を味方に引き入れられると見たら戦わずに勧誘する」「仲間が太公望のペテンにはめられない為に自ら戦いに赴く」「仲間をバラバラに分けて相手と戦わせる」と実はこちらも太公望がいつも使っている策と似たような策を使っていた事が分かる。
それにしても太公望と王天君の同一人物設定は驚いた。説明を聞いたら納得なのだが、登場当初の王天君は楊戩との対比が多かったので、太公望とも深い関係があると言うのは予想していなかった。
「鏡2」に続く。