『忍術学園と謎の女 これは事件だよ~!の段』(忍たま乱太郎20年スペシャル)
2013年3月20日放送
『忍たま』の放送開始20年を記念して放送された長編。
ドクタケ城主の木野小次郎竹高の目標は日本全国の支配。『忍たま』にはたくさんの国が登場しているが、目の前にある危険や事件の解決が最優先で最終目標が語られる事はあまり無い。そんな中、地球と言う星を認識していて、日本と言う国の全域を視野に入れているドクタケ城は当時の状況を考えたらかなり先を見ていると言える。
今回の話の主役は伏木蔵。
子供が好奇心から危険に首を突っ込んで後悔してしまうのは子供向け作品ではよくある展開なのだが、乱きりしんはあまりそう言う好奇心が無いので『忍たま』では珍しい話となった。(きり丸がアルバイト絡みで危ない時はあるが)
乱太郎と伏木蔵が行方不明になったとして土井先生と斜堂先生が捜索に向かう。実技担当の山田先生と日向先生ではなかったのは災害復旧の準備を進めないといけなかったからであろう。でも、教科担当でも土井先生と斜堂先生の実力は決して低くはなく、特に何者かの気配を察知して動く斜堂先生はかなり格好良かった。この後に乱太郎を見付けるのも斜堂先生だったし、斜堂先生は気配を探るのが得意なのかな。
タソガレドキ城主の黄昏甚兵衛を暗殺する為に八方斎が一人で送り込まれる事に。忍者隊の首領が一人で敵の城に暗殺に行くって無茶苦茶だなと思うが、タソガレドキ城に潜入出来る能力の持ち主となったらドクタケ忍者隊では八方斎が適任になるんだろうなぁ。さすがに風鬼が単独でタソガレドキ城に潜入するのは無理がある。
八方斎が女装した八方子を本物の女性だと思っていた尊奈門。大運動会の時は伝子さんを男と見破った為に大変な事になり、今回は八方子を男と見破れなかった為に周りに笑われる事になると実に気の毒。まぁ、この間の悪さと言うか不器用なところが尊奈門らしいけれどね。
災害復旧に向かう五年生と六年生が八方斎のお面を被って出発する。
八方斎のお面が初めて登場したのはチャリティーバザーの時だったっけ? 意外と使い勝手が良かったのか登場回数が多い。
きり丸と一緒に美形化して格好良い台詞を言う乱太郎。八方斎の行動を怪しむ台詞でコナン君のようになるのかなと思ったが、コナンが「外見は子供だけど中身は大人」なのに対して乱太郎は「子供が大人っぽく振る舞おうと頑張る」となっていて、コナンとは違った感じになっていた。この辺りの演じ分けはさすが。
雑渡昆奈門を見付けていつものように「ちょと粉もんさん」と名前を間違える伏木蔵に対して昆奈門は「君、誰だっけ?」とボケる。いつも名前を間違えられるのでささやかな反撃をしたのかな?
「忍術学園の中に八方斎がいるのかいないのか私は知らない。だが、我々が八方斎を追う理由は最早無くなった。八方斎には気を付けるんだよ。怪しい者は知らないはずの事を知っている。雑炊、ありがとう」。
この言い回しが昆奈門らしいなぁ。
斜堂先生と昆奈門に直接の繋がりは無いが、斜堂先生が「君がスリルとサスペンスを求めるのは本当の事を知る為ではないのですか?」と言った後に昆奈門があえて伏木蔵に考えさせる言い回しで情報を与えるのが上手い。昆奈門は実は前日の夜から忍術学園に近付いているはずなので、ひょっとしたら、斜堂先生と伏木蔵のやり取りを見て翌日に伏木蔵に声を掛けたのかもしれない。
忍術学園内で働く八方斎に滝夜叉丸の戦輪がやたらと飛んでくるが、現在の忍術学園は六年生と五年生がいないので、四年生の滝夜叉丸が八方斎の監視役になっていたのかな。(実際、最後に八方斎を皆で取り囲む時に学園長の一番近くにいた忍たまは滝夜叉丸だったので、四年生以下の忍たまの中では彼の実力が上位である事が分かる)
「きり丸ぅ~。叩いたりつねったりして赤くなるかどうか実験してあ・げ・る(はーと」。
トモミちゃん、天使のような悪魔の笑顔だ。
原作の『落乱』は実はくの一の出番が少なく、原作を基に作られる事が多いアニメの長編でもくの一がメインに関わる事は少ないのだが、今回はクライマックスで乱太郎、きり丸、しんべヱ、ユキ、トモミ、おシゲが活躍している。この6人はアニメのメインキャラっぽい扱いを受けているのだが実際にこのメンバーが長編で事件解決に向けて中心を担うのは珍しい。16期以降だと今回の話くらいかもしれない。
今回の話は表向きはドクタケとタソガレドキが対立している中、タソガレドキ城主の暗殺に失敗した八方斎がドクタケを追い出されて忍術学園に助けを求めるであるが、途中で実はドクタケとタソガレドキが裏で手を組んでいて、八方斎が忍術学園に入り込んで両軍を学園に呼び込もうとしていた事が明かされ、最終的には実はタソガレドキは忍術学園よりドクタケの方を危険視していて、今回の作戦に協力する振りをして八方斎のいないドクタケを潰そうとしていたと言う話だった。
更に今回の話は他にもドクタケとタソガレドキの多くの忍者は途中まで計画の真意を知らされていなかった、黄昏甚兵衛は八方斎の忍術学園を潰す計画を黙認しているが昆奈門はその計画を独断で潰した、計画が失敗して八方斎がドクタケに帰還したら黄昏甚兵衛の計画が潰れてしまう事を昆奈門は分かっていたがそれでも忍術学園を助ける方を優先した、学園長はかなり最初の段階で全ての計画を見抜いていた可能性があった、とドクタケ、タソガレドキ、忍術学園のそれぞれで微妙な意見や情報の違いが起きている。
大きなどんでん返しを二つも用意し、更にそれぞれの目的が微妙に違っていると、かなり複雑な話になっているのに破綻せず綺麗にまとめたのが凄い。
自分は乱太郎とユキちゃんの組み合わせが好きなのでエンディングの二人のシーンが短いけれど結構好き。