『DRAGON BALL』初の劇場版。
最初の「ドラゴンボール探し編」を再構成して、グルメス大王を巡る話を追加している。一本の映画としての完成度はかなり高い。
「ゲストの女の子の困りごとを主人公達が解決する」と言う少年向け作品の王道展開であるが『DRAGON BALL』では意外と珍しい。
敵が軍隊なのは公開時にTVシリーズで展開中だった「レッドリボン軍編」を思わせる。
今回のゲストであるパンジは本編に登場するスノに外見が似ている。
因みに本作はTVシリーズのマッスルタワー編が終わった直後の公開となっている。
パンジがパチンコ玉を使うのは本編でウーロンをパチンコ玉で攻撃した子供が元ネタで、武天老師を探しに一人で旅をするのはチチが元ネタになっていると思われる。
パンジの名前の由来は花の「パンジー」からと思われる。
『DRAGON BALL』はネーミングに法則があるが「ドラゴンボール探し編」の頃はヒロインのブルマとチチだけは同じ法則で名付けられたキャラクターが他にいないと言う特徴があった。(ブルマは後にブリーフやトランクスと言った服装由来のネーミングが確立されるがこの時点では彼らは登場していない) 本作のヒロインであるパンジも同じでこの時点では花由来の名前を持つキャラクターは彼女だけとなっている。
本作のラスボスはグルメス大王。初期の『DRAGON BALL』ではウーロン、ヤムチャ、プーアル、ピラフと食べ物や飲み物関係のネーミングが多く、本作に登場するパスタとボンゴも食べ物関係から名付けられている。それら食べ物飲み物を全て食べ尽くしてしまう「グルメ」を元ネタにした「グルメス大王」はボスに相応しい名前であった。
「大王と二人の部下」と言う敵の構成はピラフ一味と同じ。大王よりも部下の女性の方がドラゴンボールに詳しいのもアニメ版のピラフ一味と同じである。ただし、シュウとマイが忠臣であったのに対し、パスタとボンゴはリッチストンを手に入れる為にグルメス大王を利用していると言う大きな違いがある。
グルメス大王の服装は後の『ドラゴンクエストⅢ』に登場するバラモスやゾーマを思わせるものになっている。
パスタは本編に登場するランチに外見が似ている。因みにランチと同じく小山茉美さんが声を担当している。
本編のブルマは基本的に戦闘では役に立たないキャラクターなのでパスタとボンゴとの戦闘機での戦いで高い操縦技術で善戦したのには驚いた。
本編でのブルマは意外とホイポイカプセルを無くす事が多いのだが本作ではそれが無いのでかなり役に立つキャラになっている。
本編ではウーロンとヤムチャ&プーアルの活動場所は違っているが本作では同じ森で悪事を働いている。
TVシリーズのヤムチャは砂漠で活動しているのに「山賊」と言われている場面があるが本作ではちゃんと山で悪事を働いている。
TVシリーズのヤムチャは牛魔王が悟空を倒す事を期待していたが本作では亀仙人が悟空を倒すように仕向けている。嘘を吐いて亀仙人を騙そうとするなんて恐ろしい事をするなぁ。
「筋斗雲には清い心の持ち主しか乗れない」と言う設定を「嘘吐きを見破る」に使ったのは上手かった。
カメハウスが軍隊に襲われる展開は本作の公開辺りから始まったTVシリーズのブルー将軍編を思わせる。かめはめ波の一撃で軍隊を全滅させる亀仙人が格好良すぎ!
本作では悟空が大猿になる話が無いので悟飯じいちゃんの話も少な目となっている。
本編と同じように悟空と悟飯じいちゃんと亀仙人の関係をハッキリさせておけば、亀仙人が自分ではなく悟空達にグルメス王国の存亡を託したのが納得しやすくなったかなと思う。
ヌンチャクを使ってグルメス大王の城に突入するヤムチャ。
カンフーと言えばヌンチャクと言うイメージがあるが『DRAGON BALL』で実際に使われる事は意外と無い。
「ドラゴンボール探し編」では悟空と戦えるレベルの敵があまりいなかったのでボンゴが殆ど互角に戦っていたのは驚いた。パスタもヤムチャの不意打ちの攻撃を避ける等、二人とも強い。ラスボスであるグルメス大王も悟空のかめはめ波が通じないと言うこの時点では異例の強さであった。
そう言えばヤムチャが女性が苦手な時期に女性の敵と戦う事って本編では無かったなぁ。
ドラゴンボールは生物の体内に入ったらドラゴンレーダーで探知できないはずだが本作では探知できている。まぁ、原作でこの設定が出てきたのが本作の公開前後だったはずなので、製作時期を考えると仕方が無いかな。
パンジが神龍に叶えてもらった願いは「リッチストンの消滅と国の復興」であった。そして元に戻ったグルメス大王にパンジはリンゴを差し出す。『DRAGON BALL』は基本的に社会派なテーマは薄めで勧善懲悪の娯楽作である事が多いので本作の展開はかなり異色で印象に残るものであった。
パスタは悟空の四星球を奪った代わりに金貨を一枚置いていき、最後に悟空はその金貨をパスタに返している。そう言えば本編ではブルマと言う存在が悟空が旅に出るきっかけであったが本作では四星球を奪ったパスタが悟空が旅に出るきっかけの存在となっている。パスタ本人にはそんなつもりは無かったと思うが、悟空にとっては面白い世界を教えてくれた存在なのかもしれない。
何となく昭和のジブリっぽい雰囲気がある作品であった。