「それぞれの現在・過去・未来シリーズ④ -太公望なりの封神計画とバカ殿はっちゃん-」
『封神演義』第49回
太公望と姫昌の始まりが描かれる。
今から20年前に人間界を見て回っていた太公望は若き日の姫昌の器の大きさに感銘を受ける。太公望にとって姫昌はこの時の印象が強いのか、後の太上老君をめぐる冒険の際に見た姫昌の姿はこの時のものであった。
姫昌の姿を若い順に並べると、今回描かれた20年前の姿、魔家四将戦で雷震子が姫発ごしに見た在りし日の父の姿、雲中子が雷震子をスカウトに来た時、酒池肉林、ハンバーグ事件となる。
西岐の軍師になった太公望は訓練を行う一方で農耕も進めていた。これは「兵農一体」と言う農耕と訓練を同時に行う事であるが後に戦争において必要不可欠な食糧の確保と言う目的もあった事が明かされる。
太公望は周公旦に対して民の犠牲が少ない戦争をするつもりと告げていたが、その一方で戦争が長期化して食料が枯渇する可能性も見越していた。ここは理想と現実がきっちりと見れていたと言える。
太公望と周公旦の絡みは意外と多い。
その大体が太公望がふざけるかサボると周公旦がツッコミを入れ、それに対して太公望が真意を説明するとなっている。ボケとツッコミからやりとりが始まっているが、問答と言う形を使って先生の太公望が生徒の周公旦に政治や軍の事を教えていると見る事が出来る。
思えば周公旦は10代半ばで兄・伯邑考と共に西岐の政治を担当する事となった。その後、兄は殺され、引き替えに帰って来た父・姫昌は心に傷を負った状態と周公旦は10代にして周りに頼る人物がいない状態になってしまった。(思えばまだ10代の青年に「周公旦」と言う名が付けられる事が異常と言えば異常)
既に姫昌ですら反論する事が出来なくなっていた周公旦に対してハッキリとダメ出しが出来たのが太公望であり、周公旦は太公望の言動に厳しいツッコミはすれど真意を説明されて理解するとそれに素直に従っていて、まるで師匠に教えを受けた弟子のようである。周公旦初登場の回は「太公望の弟子」となっていて、これは武吉の事を指すと思われるが、ひょっとしたら、周公旦の事も指していたのかもしれない。
太公望は前回の件で姫昌の命が残りわずかである事を知ったはず。そんな太公望でも「姫昌を王にする」と言う理想を語ってしまう。しかし、周公旦は「それは無理」と言う事が出来る。太公望から父の人柄を聞かされてふと思うところがありながらも次の瞬間には父に万が一があった時に備えて太公望と姫発を会わせる事を決めている。
国を動かすには人々の心を動かす「情」の部分とシステムを動かす「理」の部分が必要で、太公望以上に「情」に流される事無く「理」で動ける周公旦の存在は西岐にとって大きかったと言える。
因みに周公旦には「情」が無いのかと言ったらそんな事は無く、姫昌が亡くなった時に太公望は「人にはそれぞれの悲しみ方がある」と説明している。
「それぞれの現在・過去・未来シリーズ⑤ -象レース-」に続く。