「最初の封神」
『封神演義』第2回
いよいよ太公望の封神計画が始まる。
太公望は「組織は頭を失えば脆くも崩れる」と言う考えからまず最初に妲己を倒す事を決め、その妲己を誘き出す為に妲己配下の強い奴に狙いを定める。太公望のこの考えは正しく、今回は陳桐一人を倒す事で彼が率いていた軍を退散させている。
陳桐の軍が人狩りを行おうとしている事を知った太公望は村人に酒を飲ませて無抵抗になったところを軍に捕らえさせる事で結果的に村人全員を無傷で助ける事に成功する。しかし、太公望の考えに気付いたのは村人の中では薬屋の主人のみで、多くの村人は「アホな道士のせいで大変な目に遭ったがラッキーで助かった」と考えている。今回に限らず、太公望は計画達成の為には自身を犠牲にする事を厭わず、後の楊戩のテストでも自分が傷付いたり憎まれたりする事を躊躇わない事が描かれている。
これはそのまま女媧との最終決戦にもあって、女媧の「一緒に消えてくれ」と言うわがままに「ま・いっか」で応えている。ここで太公望が拒否すれば女媧が抵抗する恐れがあるが、太公望が一緒に消えれば女媧はこのままおとなしく消える。そう考えた時に「ま・いっか」でそれを選択出来てしまうのが太公望と言う人物。そんな太公望に対して「でも、本当にそれでいいの?」と救いの手を差し伸べる存在が妲己なのだが、それはまたずっと後の話。
第2回で倒された事と太公望がやたらと「弱い」と言っていた事からイマイチ強いイメージの無い陳桐だが、わずかなやりとりから太公望が村人を無傷で助ける為に前夜から色々と仕込んでいた事を見破る等、実は中々鋭い。因みに次に登場する王貴人は最後まで太公望を侮ってしまった為に辱めを受ける事になってしまった。
妖怪仙人についての説明で元始天尊が「妖怪仙人への差別はいけない」と語っている。この時は横にいる白鶴童子の事を言っているように見えるのだが、後の展開を考えると楊戩の事も含んでの話だった事が分かる。
太公望の「強い奴をやっつけて妲己を誘き出す作戦」に対して申公豹は「強すぎる敵・王貴人」を出してくる。この頃の申公豹は太公望の力を見定めている最中なので、自分や陳桐との戦いを見て、王貴人クラスでなければ太公望の本気を見る事は出来ないと判断したのだと思われる。実際、後に楊戩が語るに張公明戦以前に太公望が本気を出した戦いは申公豹、妲己、聞仲の3回のみとなっている。(つまり次回の王貴人戦すら太公望は本気ではなかったと言う事になる。王貴人が知ったら激怒しそう……)
「妲己ちゃん 炮烙を造る」に続く。