「太上老君をめぐる冒険1 -帰還そして旅立ち-」
『封神演義』第149回
新シリーズ開始だが今回は仙界大戦編の後日談と言った感じが強い。
かなり久し振りとなった雷震子の再登場。雲中子は「キミ誰だっけ?」とすっかり忘れていた様子。藤崎竜さんは雷震子の存在を本気で忘れていたのか、それとも最初から雷震子を仙界大戦には関わらせない予定だったのか気になるところ。
と言う事で、ここで「もし雷震子が仙界大戦に参加していたらどうなっていたか?」を考えてみた。結論から言うと、聞仲との戦いで命を落としていた可能性が高かった。
十二仙が聞仲に特攻した時、弟子達は特攻に参加しなかった。楊戩や木吒は十二仙に説得されて特攻への参加を止めている。金吒の描写は無いが彼は状況を判断出来るので十二仙に説得されたらそれに従うと思う。土行孫は自ら死を選びはしないだろう。蟬玉は「赤ん坊の道行天尊を守る」と言う役割をこの時には与えられていた。
では、聞仲戦に参加していなかった他のメンバーはどうなのか? 弟子グループで参加していないのは哪吒、雷震子、天化、韋護となる。この中で韋護は十二仙の説得を聞き入れそうだが他の三人が危ない。十二仙が説得しても特攻しそうな奴らである。
この中でも特に危ないのが実は雷震子。と言うのも「師匠の雲中子の言う事を聞かない」し、姫昌の子で武王の弟なので他のメンバーよりも周に近い為に「ここで聞仲を倒せば兄や死んだ父の助けになる」と判断して聞仲に挑む可能性がある。そもそも雷震子は魔家四将戦の時点で「自分は死んでも構わないから敵を倒せ」と考えてしまう奴だった。
ここからは推測なのだが、哪吒は前回の戦闘で修理中、天化は別行動、雷震子は戦場に到着していないとして、藤崎竜さんは弟子の中で聞仲に特攻しそうなメンバーを戦いから外したのではないだろうか?
武吉によると金吒と木吒は「元の居住地に帰った」との事。
あれ? 金吒は東伯に、木吒は南伯に派遣されていたのだが、それとは違うのかな? 「元の居住地」と言っているので、母である殷氏の所に一度帰った可能性がある。ひょっとしたら仙界大戦で心に傷を負ったのかもしれない。(二人とも師匠の死を目の前で見ているし)
因みに仙界大戦前は雷震子は北伯に、金吒は鄧九公達と一緒に東伯に、木吒は蘇護達と一緒に南伯に派遣されていたのだが、仙界大戦後は雷震子は太公望達と一緒になり、金吒と木吒は一緒に東か南に派遣されている。
父である黄飛虎が死んでから天化は天祥を元気付けようとずっと遊んでいるとの事。さすがお兄さんと言いたいところだが、この後、天化は父の志を継ごうと一人で紂王へと戦いを挑んで帰らぬ人となってしまう。しかも、父の黄飛虎が死に間際に息子達に声をかけなかったのと同じように兄の天化も最後に天祥に声をかける事無く戦いに向かってしまい、残されたと感じた天祥は心を閉ざす事になってしまった。う~む……。天化よ、なにも父と同じ過ちを犯さなくても……。(天化の場合は生きて帰ってくる事も考えて戦いに向かっていたので死を覚悟していた黄飛虎とはまた状況がちょっと違うが)
因みに、その天祥を引き取った哪吒は常に天祥の事を気にかけるようにしていて、それを受けて、やがて天祥も立ち直っていく事になる。
生き残った金鰲の妖怪達はビーナス達が世話をする事に。「ブス」と言われたビーナスが目からビームで口答えした妖怪を封神しちゃう場面が好きw
雲霄三姉妹と関わると妖怪はロクな事にならない。新たな仙人界でビーナス達が妖怪代表にならなかったのはこういう事があったからかな。
四聖封神!
えっ!? 太公望達との再戦は無いの!?と驚いた。
今回の四聖は紂王の恐ろしさを引き立てる役であった。序盤に出た強敵が終盤になって新たな強敵の引き立て役になるのはバトル作品ではよくある事。もはや60年前に聞仲と四聖が妲己一味を倒した時とは状況は大きく変わってしまったのだ。
後に明らかになるが紂王は攻撃を受ければ受けるほどに強くなっていくので、四聖のような直接攻撃が得意なタイプにとっては相性が悪い相手だったと言える。
崑崙山が落ち、これからは仙人界のバックアップを受けられなくなった太公望は新たに太上老君を探して味方に引き入れようと考える。
太上老君をめぐる冒険に出た太公望は楊戩に対して「周の国はしばらくまかせた。良いと思うようにしろ」と書き置きを残す。今回、太公望が旅に出たのは妲己との戦いに備えての戦力アップなのだが、その他に「自分がいなくても周と言う国がちゃんと動くかどうか」を確かめたかったと言うのもあったのかもしれない。
「太上老君をめぐる冒険2 -桃源郷-」に続く。